成年後見
成年後見制度は精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)により判断能力が十分でない方が不利益を被らないように家庭裁判所に申立てをして、その方を援助してくれる人を付ける制度です。
悪質な訪問販売員に騙されて、認知症の一人暮らしの高齢者が高額な商品を買わされてしまうなどといったことを最近よく耳にしますが、 このような場合に成年後見制度を上手く利用することによって被害を防ぐことができます。
また、成年後見制度は精神上の障害により判断能力が十分でない方の保護を図りつつ自己決定権の尊重、残存能力の活用、 ノーマライゼーション(障害のある人も家庭や地域で通常の生活をすることができるような社会を作るという理念)の理念をその趣旨としています。
よって、仮に成年後見人が選任されてもスーパーでの買い物のような日常生活に必要は範囲の行為等は本人が自由にすることができます。
<メリット>
・後見人が財産を動かせる
後見人が本人の財産を管理処分できることが、第一のメリットです。
例えば、介護施設に入るお金を用意しなければならないとき、本人の自宅や他の財産を売却しようにも、本人の判断能力が低下している場合は適切に売買の手続を進められません。権利をもたない親族は勝手に売ることもできません。そのようなときに後見人が選任されていれば、代理権によって財産を処分して本人のために使うことが可能となります。
・悪質な契約などを取り消せる
本人の判断能力が低下していると、悪徳業者などに騙されたり、自分に不利な条件の契約をしてしまったりする可能性があります。後見人が選任されていれば、取消権を行使して契約を取り消すことができます。
・財産の使い込みなどを防げる
高齢者の判断能力が低下してくると、親族などが本人の財産を使い込んでしまうことが考えられます。後見人が選任されている場合は、すべての本人の財産を成年後見人が管理するので、第三者が勝手に使うことは不可能となります。
<デメリット>
・申し立てに費用がかかる
成年後見制度は「無料」ではありません。
申し立ての際に費用が発生します。家庭裁判所に納める収入印紙代、診断書代、他諸経費などもかかります。
成年後見人が選任されてからは毎年、後見人への報酬も発生します。
・成年後見人の取り下げは難しい
いったん成年後見人が選任されると、自由に解任することはできません。親族が後見人に不信感を抱いたりすることがあっても、「気が変わった」などの理由で後見人を解任することはできませんので注意が必要です。
・不必要な出費などができなくなり自由度が減る
成年後見人が選任されると、本人のすべての財産を後見人が管理し、本人にとって必要なことにしか出費ができなくなります。そのため、相続人予定者にとっては融通がきかなく不便と感じるケースもあります。
財産管理委任
財産管理委任契約とは、自分の財産の管理やその他の生活上の事務の全部または一部について、代理権を与える人を選んで具体的な管理内容を決めて委任するものです。民法上の委任契約の規定に基づきます。財産管理委任契約は、当事者間の合意のみで効力が生じ、内容も自由に定めることができます。
財産管理委任契約と成年後見制度の大きな違いは、成年後見制度は精神上の障害による判断能力の減退があった場合に利用できるものですが、財産管理契約はそのような減退がない場合でも利用できる点です。
よって、すぐに管理を始めなければならない場合、判断能力が徐々に低下してもその前から管理を継続させたい場合、死後の処理も依頼したい場合に有効な手段といえます。
<メリット>
・誰に何を頼むかを本人が自由に決められる
<デメリット>
・任せられた人を監督する機関がない
・金融機関によっては代理人による手続きが許可されない
・不動産の処分が難しい